15区で最初のレストランである「新kaiseki」をパリジャンに披露して、もうかれこれ30年が過ぎようとしています。、侘び寂びを意識したミニマムな内装、厳選したオーガニック食材や自然ワインにこだわった、18席だけの小さなレストラン。シェフが目の前で調理している様子をお客様が直接見られるのは、当時のフランスでは珍しく、調理中のパフォーマンスが音楽と一緒に楽しめるものでした。
それから30年以上が過ぎようとしています。日本にはお菓子はあるが、フランス料理のように正式なデザートはなかった。今にして思えばニューkaisekiはデザートを中心とした女性のためのkaisekiであったように思われます。日本料理におけるデザートの不在については、日本の食文化の豊かさと多様性を示すものであり、社会的文脈によって異なる食事のあり方があることを示唆しています。女性向けのkaisekiがデザートを中心とする傾向にある一方で、お坊さんや侍向けのkaiseki料理は異なる特性を持ち、食事の目的や背景が異なることを示唆しています。
今まで10冊以上の本を書いてきましたが、現在進行形のニューkaisekiを1冊の本にまとめる機会がなかなか出来ませんでした。日本の古来の懐石料理は、まさしく芸術の一形式であり未来に向けて進化していくためには、女性の繊細なアート感覚が必要不可欠だと認識しています。
フランスと日本の文化の交流を深めるため、世界中から才能あるアーティストや研究者が集い、新たなアイデアや視点を生み出す場は、私にとっても願ってもないチャンスであり、このような異文化間のプロジェクトに参加することは大変魅力的です。日仏の文化の融合や相互理解を深めるために、私もこのプログラムに参加しArt-Cookingを前進させ、料理や食文化における革新や伝統の尊重、健康的な食習慣の普及など、共通の関心がある世界の料理を愛する人たちのために、少しでもお役に立つ事ができれば幸いだと思っています。