皆さんご存知の通り、時代は止まることなく動き続けています。
そして、芸術の形もまた、時代とともに変化していくんですよね。

竹内寿幸(Takeuchi Hisa)
これまでずっと「料理」という芸術を追い求めてきました。
そして最近、特に興味を持っているのが——そう、TikTokなんです

「え、TikTokって若者の遊び場じゃないの?」
そう思う方も多いかもしれません。
でもね、私はそこに新しい芸術の息吹を感じているんです。

なぜなら、芸術の本質って、
「時間」と「感情」をどう切り取るか、なんですよ。

一瞬を切り取る芸術

懐石料理や寿司の世界では、
「一期一会(いちごいちえ)」という言葉がとても大切にされています。
たった一度の出会い、その一瞬に全身全霊を込めるという精神です。

実は、TikTokの数秒の動画も同じだと思うんです。
ほんの短い時間の中に、動き・音・香り・想いを込める。
それはまるで、映像の懐石料理のようなもの。
現代の“美味し道(びみどう)”と、どこかでつながっている表現なんですよね。

芸術とは「共有する」

昔の芸術は、どちらかというと「鑑賞されるもの」でした。
でも今は、「共鳴し、共有されるもの」へと変わってきています。

TikTokのようなメディアでは、
観る人がコメントや共感を通して作品に参加できる
つまり、一方通行ではなく、共創(きょうそう)の時代なんじゃないかな。

お寿司も同じです。
作り手と食べ手の心が通じ合ったとき、
初めて料理は完成する。
その共鳴の瞬間こそが、芸術の真髄。

新しい芸術の醍醐味

TikTokのような新しい舞台は、
私たち表現者に自由と同時に責任を与えました。

短い時間の中で、どれだけの真実と美しさを伝えられるか。
それが現代の芸術家に課された新しい挑戦なんです。

私にとってTikTokは、
料理・映像・哲学が交差する「実験の舞台」であり、
新しい美学を探る「研究所」でもあります。

料理も映像も、すべては“心の芸術”。
そこに魂を込めた瞬間、
それは誰かの記憶の中で永遠に生き続ける。

最後に

芸術の形は変わっても、
その根底にある命への敬意美への探求は変わりません。

TikTokという小さな画面の中にも、
無限の宇宙が広がっています。

そして、その中には——
ひとりの料理人の「心の道」が、静かに、確かに。

竹内寿幸(Takeuchi Hisa)  

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Hisayuki Takeuchi

竹内寿幸(たけうち ひさゆき)

私は愛媛県西予市、山間の農家に生まれました。
子どものころから畑に出ては、野菜や米の成長を見つめ、季節の変化に心を動かされてきました。食材への敬意や、自然との対話というものは、この頃から私の中にあったのだと思います。

14歳で料理の世界に入り、今治で西洋料理の修行を始めました。その後、東京に移り、水口多喜男氏のフランス料理店で本格的な料理の道を学びました。料理人としてだけでなく、人としても大きく成長できた大切な時期でした。

また、シェフパティシエの鈴木一八氏のもとでは、洋菓子の世界にも触れました。素材の組み合わせや、味の余韻、美しさをどう形にするか──この経験が、後の私の創作に大きな影響を与えてくれました。

「KAISEKI」という名の“研究所”パリで始めて

1985年にフランスへ渡りました。当初は作家を志していましたが、やはり私の手は自然と食材を求めていたようで、料理人としての歩みを再び進めることになります。

1999年、パリ15区に「KAISEKI」という名の小さな店を開きました。私にとってこの店は、レストランというより、料理の研究所でした。オーガニック食材、自然派ワイン、日本の器、空間美──すべてが一つの芸術として響き合う場を作りたかったのです。

私の料理は、伝統的な日本料理を軸にしながら、フランスの素材や技法も柔軟に取り入れています。たとえば、抹茶とオリーブオイルを合わせたソースは、デザートにも料理にも応用できる独自の世界を生み出しました。

また、「Maki Pikapika」や「Maki Dondon」など、果物や西洋の素材を大胆に取り入れた寿司も生まれました。遊び心と深い美意識の共存こそ、私が目指す“kaiseki”の姿なのです。

教えること、伝えること

2001年からは「エコール・ド寿司」という学校を始めました。日本料理は、技術だけではなく、素材の選び方、季節感、空気のような“間”を含んだ文化だと私は思っています。

だからこそ、プロ・アマ問わず、目の前でともに包丁を握りながら、一つひとつの所作の意味を丁寧に伝えています。生徒の中には、フランスで寿司店を開業された方も多く、日本文化の担い手として誇りに思っています。

私が大切にしていること

料理とは、日々変わっていくもの。
完成ではなく、更新され続けるべき芸術です。

私の料理哲学には、「永続的な美の追求」があります。
それは、食材、器、空間、すべてを通して人の心を動かし、癒すものであるべきだと信じています。

これからについて

引退を迎える今でも、料理への情熱は変わりません。
これからは、もっと多くの人に、日本料理の本質──“素材への敬意”“時間の流れ”“手仕事の意味”──を伝えていきたいと思っています。

オンライン講座や書籍、トークイベントなど、形を変えてでも「本物の味」や「美しい心」を広めていく活動を続けていくつもりです。

ご縁があれば、ぜひ私の料理や考え方に触れていただければ嬉しく思います。ありがとうございました。

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